(真)日本の黒い霧

123便事件は世界の闇を照らす

魔法の電圧変換装置(トランス)は存在しない

※この記事はコメントへの回答であると共に、(新)日本の黒い霧に掲載された電力送電系の記事「大電力送電の大嘘」、「北海道、嘘だらけの節電呼びかけ」の補足説明を兼ねています。


大電力長距離送電の嘘に関して、某ブログを介して、次のようなご質問が私の元に届きました。真摯に答を求められているようなので、それに対し、私も真摯にお答えしたいと思います。まず、ご質問の全文をご紹介します。

 高電圧送電の本質はトランスの働きにある
はじめまして。


日本の黒い霧サイト記事「大電力送電の大嘘」にて、「長距離送電は不可能である」と結論付けていますが、導入部に出てくる参照サイトの説明がそもそも誤っているため結論自体も間違っているのではないかと考えられます。


参照サイトでは以下の式が出てきますが、
(1) Pp = Vp x Ip
(2) Pc = (Ip x R) x Ip
(2)番の数式が間違っており、正確には
Pc = (Ic x R) x Ic
となるはずです。つまり、(1)と(2)の数式に出現する電流値は異なるということになります。

その根拠ですが、「交流 長距離送電」で検索したら以下のサイトが出てきました。
[FNの高校物理 - 高電圧送電が有利なわけ]
http://fnorio.com/0016High_voltage_power_transmission/High_voltage_power_transmission.htm

上記サイトでは、「高電圧送電の本質はトランスの働きにある」と大前提を記載しており、
 ・発電側の回路から送電線区間の回路に入る前にトランス変換により電圧上昇+電流下降
 ・送電区間の回路から受電側の回路に入る前にトランス変換により電圧下降+電流上昇
トランス変換を挟むことで、間の送電区間に流れる電流を極端に小さくし、結果として送電区間での損失電力量を抑えているようです。


日本の黒い霧サイトでは、発電-送電-受電の区間で一つの回路で構成されているモデルを採用していますが、現実の送電では複数の回路(最低でも3つ以上)で構成されるモデルが正しいのではないでしょうか。

そのため、「長距離送電は不可能である」という結論を導くためには"トランスの前後で大幅に電力損失が起きる"などの別の反証が必要になるものと考えられます。

 

返答1:数式の間違いについて

まず、(新)日本の黒い霧の「大電力送電の大嘘」で説明に使ったモデルですが、こちらはトランスを介さない同一回路内ですので、電流 Ip と Ic は等しいとしています。よって(2)の数式に出現する電流値が異なるというご指摘は当たらないと考えます。

 

返答2:トランス変換で損失は抑えられるのでは?という質問につい

ご意見の根拠が質問中の引用サイトにあるようなので、そちらを元に説明します。下記は同サイトからの引用です。改行等を加えておりますが、本文の変更はありません。

 3.高電圧送電
 
途中にトランスを挟んで送電電圧を上げた場合を考える。ただし負荷抵抗、負荷電流、発電機の発電電圧をすべて同じにする。

f:id:adoi:20180913151806g:plain

負荷による消費電力は
 P=VBCI=RI=10×1=10W
となり全く同じである。いま負荷側のトランスの巻数比例10:1とする。このときBC間の電圧は
 VBC=RI=10×1=10V
であるが、トランスの理論により
 VFG:VBC=10:1だからVFG=100V、
 IFG:IBC=1:10だからIFG=0.1A
となる。

回路を流れる電流が0.1Aだから送電線による電圧降下は
 VEF=rI=10×0.1=1V
となり、消費電力は
 P=VEFI=rI=10×0.1=0.1W
となる。結局E-F-G-Hの回路の電圧降下は
 1+100+1=102V
となる。つまりEH間にVEH=102Vの電圧を発生すれば良いことになる。

発電電圧は同じVAD=30Vだから巻数比30:102のトランスをつなげば良いことになる。そのとき発電機が送り出す電流はトランスの理論により
 IAD=0.1×102/30=0.34A
となる。つまり発電機が送り出す電力は
 P=VI=30×0.34=10.2W
である。送電線によるエネルギー損失は
 0.1×2=0.2W
だから発電機が送り出す電力10.2Wのわずか2%となる。

2.と3.を比較すれば明らかなように、トランスを用いて送電電圧を30Vから102Vに上げるだけで、送電線によるエネルギー損失を67%から2%へと劇的に少なくできる。なぜそんなことが可能なのだろうか。それは以下のメカニズムによる。

トランスによって送電電圧を上げれば、当然受電側にも電圧を下げるトランスを設置しなければならない。このとき回路E-F-G-H-Eの電流は共通で、EF間電圧降下はVEF=1V、FG間電圧降下はVFG=100Vであった。直列結合の場合電圧降下量は抵抗値に比例するので、受電側FG間の抵抗R’が1000Ωであることを意味する。つまり元々RBC=10Ωだった負荷抵抗が100倍のR’FG=1000Ωになったように見える。トランスをもちいる理由は、負荷抵抗を見かけじょう大きくして送電線の抵抗rと負荷抵抗Rの比率を圧倒的に負荷抵抗側に寄せることにある。そのため電力消費の比率も圧倒的に負荷側に偏る。これはトランスのインピーダンス変換機能を利用している。


この説明を読んでいると、物理をやってきた者として看過できない表現があります。それは、以下の文言です。

"トランスをもちいる理由は、負荷抵抗を見かけじょう大きくして送電線の抵抗rと負荷抵抗Rの比率を圧倒的に負荷抵抗側に寄せることにある。"

何なのでしょう、「見かけ上とは」?実際に電流値が低下したのなら、実体となる抵抗がそこにあるからと考えるのが物理です。そして、その抵抗となった部分が現実には電力を消費しているのは間違いありません。何故それを踏み込んで考えないのでしょうか?

このカラクリは簡単で、同交流回路ではトランスによるリアクタンスとインダクタンス、それにより発生するインピーダンス(抵抗)を全く考慮に入れてません。図によると発電側の抵抗がおよそ88Ωですから、送電回路内のインピーダンスは1017.3Ωと計算され、これは大よそ1000Ωですから、実は見かけ上の抵抗とだいたい辻褄は合っているのです。

さらに、送電回路から受電回路に変換するときにも受電回路内にインピーダンスが生まれます。それを計算すると10.4Ω。回路内抵抗が既に10Ωありますから、受電回路内の総抵抗は20.4Ωとなるのが正しいです。

よって、このモデルが仮定している受電側で 1A の電流が流れるという前提は成立しません。実際の電流値をIrとすれば

  Ir = 10 / 20.4 = 0.49 (A)

となり、受電回路内の電力量 Pr は (受電側の電圧をVrとする)

  Pr = Vr × Ir = 10 × 0.49 = 4.9 (W)

となります。ここから電力損失率を計算します。発電回路内での電力量10.2(W)を Psとすると

  電力損失率 = (Ps - Pr) / Ps = (10.2 - 4.9) / 10.2 = 0.52  (52%)

となり、回路全体で半分以上の電力が送電のために失われてしまったことが分かります。50%程度の損失なら効率は良いと言えるかもしれませんが、実はまだインダクタンスの相互作用など厳密な抵抗値が計算できている訳ではないので、実際には損失はもっと大きいはずです。少なくとも、損失率2% などという劇的効率化には程遠いことがお分かりいただければと思います。

これに関連してですが、この送信回路の受電側からのインピーダンスは1000Ωと計算できます。発電側とほぼ同じ値であり、この説明モデル自体が恣意的にインピーダンスマッチングの調整を施されていると分かります。恣意的というのは、このモデルを設計した人物が交流回路の何たるかをよく理解しており、それにも拘らずインピーダンスに触れていないことを意味しています。マッチングしている時が最も電送効率が良いのは常識ですが、逆に言うと最も効率の良い時でも送電による半分以上の電力損失は避けられないとも言えます。

ともかく、このモデルの大きな誤りは、トランスを用いた交流回路を説明しているにも拘らず、リアクタンス、インダクタンスなど、磁気発生や起電力による電力消費について一切触れていないことにあります。

さて、送電回路内の電流値が下げられるなら、例え送電効率が半分以下でも長距離送電は可能ではないか?というご意見が聞こえてきそうです。それは尤もであり、私もそれで行けるのではと思っていました。しかし、ここで実験室内の中小電力レベルと現実の大電力送電のスケールの違いが効いてくることになります。


発電というのは、最初から電圧を決めてできるものではありません。発生する電流量に抵抗による負荷をかけて最初の電圧は調整されます。電流量が多すぎれば磁気による抵抗が過大となりますので、せいぜい数百アンペアまで。それに数10オームの経路上の負荷がかかるとすれば、最初の発電圧はせいぜい数千ボルトのオーダーまでだろうと予測されます。これについては現場のエンジニアのご意見をぜひお聞きしたいところです。


ここで発電回路内に6000ボルトの最初の電圧が生まれたと仮定します。回路内の抵抗が20オームとすれば、発電時の電流量は300アンペアと計算されます。これを電力会社が公表する通り、50万ボルトの超高圧に変圧すると、送電回路内に発生するインピーダンス(抵抗)は

 13.9万オーム

という膨大なものとなり、確かに送電回路内を流れる電流値は理論的に極小(3 2.5A)となりますが、抵抗自体は熱や電磁波となってトランスに対し物理的影響を与えずにはいないはずです。そして、果たしてこれだけの高負荷をトランス装置自体が24時間、365日間無停止で耐えられるのかという運用上の大問題が急浮上します。また、トランスによる負荷だけでおよそ120 90万ワットの電力消費となり、これはだいたい民家500 400戸超分の最大電力使用量に匹敵します。


現実に、これだけの巨大な力をコントロールすることには、一瞬たりともミスが許されません。もちろん電力会社は、それだけの仕事をしてるんだ、という自負がおありでしょうけども、実は超高電圧の本当のカラクリもご存知ではないでしょうか?そしてなぜ、これまで発電、変電施設で、重大事故が発生しなかったのか、その神業的制御の理由も。ともかく、耐久性維持やメンテナンスの経費、効率などの現実的な運用を考えるほど、電力会社の言う超高電圧送電などほとんど不可能であると結論付けるしかないのです。

実はこの引用サイトを製作された元高校理科教員の方も、このページの冒頭で、

”高校物理の電流のところで「オームの法則」や「抵抗での電力消費」を習います。そのとき電力を発電所から遠隔地に送るには一旦電圧を上げて高電圧で送ると送電損失が少なく有利だとならいます。ところがその有利さがなかなか理解できません。”

と、高電圧により送電損失が少なくなるという理屈に充分納得されていないご様子です。おそらく、本人ご自身が納得するために各種資料を当たったところ、このような作為的かつ巧妙な説明を見つけるに至り、思わずこれだと引用されたのでしょう。しかし、

 トランスは魔法の電圧変換装置ではない

のです。そして、教科書に書かれている説明も間違っており、その間違いが何十年間も教育現場で教えられ続けていたのです。全国の理科教諭は長年の疑念こそ正しかったと自信を持って、高電圧送電有利説は嘘だと生徒さんに教えてあげてください。


結論

・トランスを介した高電圧送電で、最も効率が良い回路を組んだとしても、損失率 2% などという劇的な損失率の改善は達成できない。

・大電力の場合、そもそも発電側で50万ボルトへの変圧など実運用上できない。


どちらも、大電力会社や大手電機メーカーが一般の利用者に向けて説明している話と全く異なります。大電力を分散させ長距離送電可能な小電力ラインを何万本も引くという方法が、コスト的にペイしないことは他の記事で既に説明済みですから、結果として大電力の長距離送電などできないという結論が導けます。


私の記事への反論の中に「〇電や〇芝が嘘を吐いているとでも言うのか!」などという全く見当違いなものもあるようですが、そもそも嘘を吐いていると思わなければ、わざわざ時間をかけてこんな記事を書きません。どうしてこんな嘘が何十年もまかり通っていたのか、おそらく電力大手さんたちは魔法を使えるのでしょう。

私の最大の関心事とは、優秀な日本の理系エリート集団である彼等が、どうしてこんな嘘を吐かなければならないのか、そこにあるのです。そして、その問いの帰結こそが、この国の隠された地下原発政策なのであり、それ以上にもっと重要と思われるのが電線網の多目的利用なのです。

 

二の年に記す
管理人 日月土

 

追伸
 ある人を介して、電力中央研究所の所員が私の記事にたいへんお怒りであると知らされました。私も必ずしも電気分野が専門ではありませんから、「何か間違いを書いてしまったでしょうか?」と尋ね返したところ、

 事実だから怒ってるんです

・・・・いったい、どういうこと(汗)?