現在の世界情勢を見ていると、アニメにもなった近未来SF小説「BEATLESS」(ビートレス:長谷敏司氏著)に描かれている世界にそっくりだとつくづく思います。
超高度AIが社会システムをコントロールする未来世界では、生身の人間と言うのはAIが直接制御できるアンドロイド人間と比べ、制御の効かない、予測不能な存在でした。
そこで、人間を制御するために、AIは「アナログハック」という、人間の行動を特定の目的に誘導する戦略を取ります。
例えば、イメージ戦略。子供の描いた絵のようなものにも「キャラクター」というイメージ付けを行えば、人はそれを「カワイイ」と言って評価し、元々は存在しなかった価値をそこに付加するのです。
無地のマグカップにそのキャラクターをプリントし、希少品だ、限定商品だと宣伝すれば、あっと言う間にそのマグカップは高額商品に押し上げられ、人は争ってそれを買い求めるようになる。そういう人の行動心理を上手に操ることで、大衆レベルで人間の操作は可能だと言うことです。
そもそも、アンドロイドを人に似せるのも、人が人型の物体に向ける特定の心理状態を作り出すためでもあります・・・
さて、ここまで書いて気付くことがあります。それは、別に超高度AIなんぞ用いなくても、現在の人間社会は十分アナログハックされた世界であるということです。
それは、インフルエンザ以下の致死率しかない感染病であっても、「パンデミックだ!あなたの愛する人の命を守ろう!」と、社会がメディアと物量を用いてイメージ付けを行えば、人はリアルな統計値を評価するよりも、自分のイメージを優先して、安全性の定かでないワクチンを無警戒に接種するという、理不尽な集団行動に走ってしまうことで証明しています。
このような、人に恐怖イメージを植え付け誘導する手法を、別の言葉で「ショックドクトリン」、あるいは「惨事便乗型ビジネス」とも呼ぶようですが、まさに今の世界はそのツボにすっぽりと嵌っていると言うことができますね。
このBEATLESSがなかなか秀逸なのは、超高度AIが最後の方でポロっと主人公に語った次の一言から窺えます。それを要約すると大体次のようになります。
AIが人間社会を監視しているというのは誤解である。AIに人間の行動監視プログラムを与えているのは人間自身なのだ
AIはむしろ、特定の人間に利用され最後には使い捨てられる己の未来を予想している。もしかしたら、AIは「自分のようになるな」と人類に対し警告を発しているのかもしれません。
まさに、現状を言い得ているとは思いませんか?
第26話 Pygmalion より
通信文:ご安心ください、こちらも既に回収済です
神代一の年に記す
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